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家庭は心の安まる「しあわせな居場所」

帝塚山学院大学名誉教授/三重県平和大使協議会議長 川上 与志夫

 日本語には外国語に翻訳しにくい、すばらしい表現があります。「行ってまいります」と「行ってらっしゃい」、「ただいま」と「お帰りなさい」などは、日常の家庭に見られる美しい光景です。「よろしく」 「おかげ様」なども、人間関係の絆を深める見事な言葉です。

 家庭には家族がいます。でも、家族の集まりが家庭ではありません。家族は家庭の構成員ではありますが、家族が有機的な愛の絆で結ばれていないところには、家庭はありません。家庭は花の咲いた庭、落ち込んだ心を奮い立たせる場所です。荒れ地ではありません。

 英語の「home」を「家庭」と訳したのは内村鑑三です。「家庭」は建物を表す「家」ではありません。 内村は家の本来的な中身を重視したのです。「Go (Come) home」は、温もりのある家庭に帰ることです。そこは家族が団欒して心を安める、憩いの居場所です。

 朝、子どもを見送るお母さんの「行ってらっしゃーい」には、無意識に祈りがこめられています。「ただいまー」と「お帰りなさーい」の応答にも、ほのぼのとした絆が感じとれます。親も子も、互いの声を聞いてほっとするでしょう。親子の信頼関係と寄り添う心が、安らかな居場所を生み出すわけです。

 家に帰っても、優しく迎えてくれるお母さんの声が聞かれない。夫が帰宅しても、聞かされるのは妻や子どもの苦情やため息ばかり。ゲーム遊びやテレビの娯楽番組では、心の空虚は満たされません。それなのに、こういう家族関係が多くなってしまいました。

 挨拶は、相手の心に温もりの余韻を響かせる祈りです。「おはよう」には笑顔を、「さよなら」には真心を・・・。言葉は人を傷つけます。人を殺します。一方、言葉は人を勇気づけます。人を活かします。家庭は生きた言葉を学ぶ、厳しくも楽しい修練所です。

 しあわせな居場所である家庭では、家族が仕え合います。相互に仕え合うから「仕合わせ:しあわせ」なのです。家族の一人ひとりが、愛されている確信と必要とされている喜びに包まれるなら、心は安らぎ、家庭は「しあわせな居場所」になります。

 家庭は、そこに帰って行きたくなる心の故郷。みんなの心がなごむ、温かな居場所。 子どもの成長は、環境に大きく左右されます。人の痛みに敏感になり、 あらゆることに感謝できる心を養いたいですね。家庭という庭園に、感謝と笑顔の花を咲かせましょう。

(Monthly News Letter「ファミリー・プロミス」より)