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児童教育私考

学習塾経営者・教育評論家 富山 暘子

 私は2年前から、ある知的障害児(小学5年生)の学習指導をしています。この児童は一年生のときに、学校から特殊学級に入るように強く言われました。しかし児童の母親は、特殊学級を再三見学した上、普通学級に入学させることにしました。特殊学級は、将来社会人として、人々と協調し、集団行動を尊重する人間を育成し、学習面でも個々の児童に合った指導方法を行うことを前提としています。また、特殊学級に入ったことで、いじめられることもなく、 他の小さい子の面倒を見るようになることで自信が生まれたりと、良い面もあるようです。

 しかし一方で、問題も生じやすいのです。それは、1年生から6年生までの合同クラスであり、実際は理想どおりの指導が難しく、学力がほとんどつかないなどの場合もある事や、児童が騒いだり奇声を発したりする事で指導が困難になるなどの問題です。

 この母親は子供を、普通学級に入学させることで、 家庭では1年生から3年生までの間、算数の基礎的 な「九九」「足し算・引き算」「かけ算・わり算」などを繰り返し教えて覚えさせ、漢字も毎日毎日繰り返して教え、覚えさせることに努力し、一応の成果がありました。しかし、これまでのゆとり教育が終了し、4年生から5年生にかけて急に学習内容が難しくなり、今、先生も親も児童も毎日必死で取り組んでいます。

 私自身は1対1の向き合い指導で何冊ものノートを使いながら、時にはこの児童の目線に立って、どうしたらよく分かってもらえるかを念頭に指導方法にも様々な工夫をこらし、教科書に即しながらその児童の理解するやり方を考えながら指導を行ってきました。

 最初は一つの問題についても50回近く教えなければ理解できませんでしたが、今ではその半分ぐらいで理解できるまでになりました。能力と学力がついてきたことを実感します。以前はいつも言っていた「分からない」「ムリムリ」の言葉を禁じ、児童と一緒に問題文を読み、考える練習を続けてきた結果、今では「自分ひとりの力でやるから、何も言わないで」とか「漢字や分数95点を取りたいな」と言うようになりました。

 いつも児童の横に座って勉強の様子を見ながら勉強が進んだり、いい返事をすると、本当に喜んでいる姿を見ると、やはり母親の子供に対する無償の愛を感じます。私もこのお母さんの願いに応えられるように頑張ってきましたが、この児童が友達と同じように理解し、問題を解けるんだという喜びを与えたいと強く思い、問題を自力でやり遂げたときは、大げさなぐらいに褒めました。

 母親の愛と積み重ねた努力の効果が出てきて、児童の頭脳が活発に働きだしたのではないかとさえ思いました。今後、さらにこの児童の可能性を引き出せるように全力を尽くしたいと思っています。

(Monthly News Letter「ファミリー・プロミス」より)