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危機と好機

元玉川大学客員教授 長谷川 義縁

 陰湿ないじめや非道な虐待、無情に孤立死で命を絶つ人々がいる世情には耐え難い。「もっと生きたかったけど、死なせてもらいます」「学校に行くことがつらい」「生きていることが怖いのです」と言って自殺するか弱い子供、むごい仕打ちで子を死に追い込む親、生活苦にひしげる孤独者、社会の非情が極限まできている感さえします。

 経済的繁栄とともに、一部に利己主義、享楽主義の傾向があることは否めませんが、精神的理想の欠けた状態が続けば、長期の経済的繁栄も人間生活の真の向上も期待することはできません。福祉国家となるためには、人間能力の開発によって経済的に豊かになると同時に、人間性の向上によって精神的、道徳的にも豊かにならなければならないのです。

 突如起こった東日本大震災、一瞬に街をのみこみ尊い多くの命を奪い去った津波、自然の脅威に逆らえない弱い人間を見せつけられた大災害でした。誰しも何時自分が弱い立場に置かれるかも知れない怖さを痛感しました。「明日はわが身に」災いが起こるおののきを隠しきれなかったでしょう。

 自然の怖さも人災の非情さも、いま私の心の隙間に忍び込んでいます。いじめの舞台は学校だ。虐待は特殊な親だ。孤立死は行政の責任だ。防災は国の仕事だ。・・・と、うそぶく自分が居ればそれが問題児です。「分かっている」「知っている」人ばかり多くて、行動を起こす人は少ないのです。「自分には関係ない」と転嫁し、「面倒なこと」は傍観する「事なかれ主義」が経済的な豊かさの代償として定着したいま、3.11の未曾有の大災害は、日本人の将来に向けて、 精神的・道徳的に豊かになり、みずから自分自身を律し本能や衝動を純化し向上することを期待した「天命」として受けとめたい。

(Monthly News Letter「ファミリー・プロミス」より)