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小中学校の教育の充実を願う

北海道大学名誉教授 冨田 房男

 私は1939年生まれで、しかも、中学校まで北海道の田舎のど真ん中で育った。従って、学校に上がる(当時は上がると言っていた)のが楽しみだった。 同級生は12名だった。しかも複式単級(1年と2年、3年と4年、5年と6年が一緒)だから、先生は半分しか自分たちを向いてくれない。あとの半分は自習(隣の学年の授業をおとなしく聴くこと)だった。ここで教わったことはあまり知識の詰め込みではなかった。どうやって我々が生きているのか、どうやってこれから生きるのかを教えてもらってよかったと感謝している。「生活科学」と言うと大げさだが、極めて基本的なヒトとしての生き方、判断力の基本を教えてもらったとありがたい気持ちでいっぱいである。

 勿論高校そして大学に進むにはかなりの知識が必要だが、これは後からでも十分に間に合った。 体系的に学ぶのは中学校の後半からでも十分と考える。知識を入れる勉強はそれぞれいつが良いかは個々人によって差があると思う。いわゆる「鉄は熱いうちに打て」或いは「人を見て法を説け」も当てはまる。勉強をやる気がないのに、またタイミングがわるかったら頭に入らないのは当然である。ヒトそれぞれに発達段階の差があることを改めて考え直したい。

 さて、最近の小学校の先生は教育以外のことに関わることが多すぎるようである。そのような中でノイローゼになる先生が多いとも聞かされている。私は、小・中学校に素晴らしい教育のできる先生が来るような魅力ある職場にすべきと願っている。フィンランドのように、少なくとも修士課程を終えた優秀な先生がこぞって入ってきたいと思えるような環境や制度の整備が必要である。教育委員会やPTAがあまり干渉するものではない。むしろ応援団になるべきである。

 科学に関わる先生には勉強の時間を与えなければならない。特に最近の生物学の進歩は極めて早い。これについていくにはそれ相当の学習が必要である。端的な例が、遺伝子組み換えだろう。これを理解している先生は少ない。今回ノーベル賞を受賞した山中教授の研究も、遺伝子組換えなしには達成できなかったものである。また今かなり感情的拒否反応が強いものに遺伝子組換え作物・食品があるが、これも最近の生物学の進歩を学べば、従来品種よりも安全とわかるはずである。現在は、大学で学習した知識でもせいぜい数年使えるだけと言える。常日頃の学習が必要なのである。この点でも、本当に正しい判断を下せる方法を学ぶのに、初等教育の重要性を再度強調したい。いま人口減少が日本の状況である。もっときめ細かい教育を、小学校そして中学校でもできるようにすべきと願っている。

 言うまでもなく家庭教育も上記以上に大切である。そのためメディアには、見る人の人気取りだけではなく、しっかりと正しい情報を発信願いたいものである。勿論一般の方々が判断力がなくてはならないのが第一である。

(Monthly News Letter「ファミリー・プロミス」より)